高濃度ビタミンC点滴療法
高濃度ビタミンC点滴療法
ビタミンCの概要
ビタミンCの歴史
ビタミンCの摂取の必要性が言われ始めたのは、1747年にスコットランドの医師ジェームズ・リンド氏が「壊血病の原因はビタミンC不足による」という発見をしたことがきっかけでした。
その後、1970年代の初め、米国のノーベル化学賞受賞者であるライナス・ポーリング博士が「ビタミンCを1日2~3g摂るとカゼを予防できる」と発表しました。
さらに、1976年、同じポーリング博士とスコットランドの外科医、E・キャメロン博士が、「スコットランドの末期癌患者に対してビタミンCを大量投与(1日10g)したところ、4倍もの延命効果を発揮した」という試験結果が報告されました。
以降、ビタミンCに関する研究はさらに進み、ビタミンCに備わる多才な働きが明らかになってきました。
ビタミンCの特性
ビタミンCは水溶性ビタミンの一種で、私たちに欠かすことのできない栄養素です。
下垂体に最も多く含まれ(400mg/kg)、その他、副腎、肝臓、濃、水晶レンズ、白血球にも多く含まれています。
歯肉の健康や、食品中の鉄分の吸収促進、胆汁酸合成、葉酸代謝、免疫機能、抗酸化機能、数種の重要なホルモン及び神経伝達物質の合成に関与しています。
また、利尿作用を発揮し、血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪を減らして善玉コレステロールを増やしたり、メラニンの生成を抑えてシミを予防したり、抗ヒスタミン作用でアレルギー病を緩和するなどの作用が備わっています。
多くの動物はビタミンCを体内で合成できますが、ヒト、サル、モルモットは体内でこれを作ることが出来ないため、外部から補給する必要があります。
さらに、水溶性ビタミンなので、脂溶性ビタミンに比べて体内貯蔵量は低いのが特徴で、ビタミンCのプールを維持するには毎日摂取する必要があり、最大吸収率を得るには、少ない容量を1日に複数回服用するのが効果的です。
働く栄養素のチーム力強化!ビタミンCを「理想摂取量」に引き上げることがポイント
私たちは、体の細胞を新しく作り変える新陳代謝と、体や脳を動かすためのエネルギー代謝を繰り返すことで生命を維持していますが、この代謝には、カロリーに見合った充分なビタミン・ミネラルが必須です。
そこで、サプリメントを摂るときに大切な数値として、「所要量」「理想摂取量」「許容上限量」の3つがあります。
「所要量」は、欠乏症を防ぐための最低必要量、「営巣摂取量」は、正常な代謝と健康維持のための量、「許容上限量」は薬理作用を期待して摂取する量という意味です。
きちんと代謝が出来るためには、私たちの体に必要な栄養素のすべてが「理想摂取量」に達していることがポイントになります。
摂取した栄養素はいわゆるチームを作って体に作用するため、必要な栄養素のうち、どれか一つでも理想量に達せず不足している場合は、その不足している栄養素の水準でしか体に作用しないという特性があります。
特にビタミンCは他のビタミンと違って私たち人間の体の中では生成することが出来ず、しかも水溶性で体に貯蔵されることがないうえ、ストレスや活性酸素、お薬の服用、飲酒、喫煙などが原因で大量に消費されることがあります。
普段のお食事に気を付けている方や総合のマルチビタミンを摂っている方でもこのような環境の下、ビタミンCが理想量より不足している場合が多くみられ、従って、不足しているCのレベルでしかほかの栄養素も体に作用しない結果になっている事が多々あります。
このため、専門家は、最低必要量である「所要量」の2~3倍の全種類のビタミンを含む総合ビタミン・ミネラルに、特に不足がちなビタミンCの摂取をトッピングする方法を推奨しています。
他のビタミンとの相乗物質
ビタミンE、βカロチン等の抗酸化物質、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸などのビタミンB群、バイオフラボノイドとの相乗効果を示します。
特にバイオフラボノイドはビタミンCの節約効果があり、人間の体内でビタミンCをリサイクルする働きがあります。
上質のビタミンCにはバイオフラボノイドを複合した形で処方されています。
欠乏症
ビタミンCが欠乏すると、肌の調子が悪い、疲れやすい、だるい、食欲不振、うとうと状態、不眠症、歯茎や毛細血管からの出血、細菌やウイルスに感染しやすくなるなどの症状が出やすくなります。
例えば、壊血病は代表的なビタミンCの欠乏症で、コラーゲンが関連する結合組織細胞の弱体化により広範囲にわたる毛細血管出血が起こります。
フリーラジカルとビタミンCの必要性
ビタミンCは、空気汚染物質、産業用毒性物質、重金属、たばこの煙などの多くの化学物質、アルコール、抗うつ剤、利尿薬と拮抗します。
つまり、ビタミンCは自分を犠牲にして私たちのフリーラジカルと戦ってくれる救世主です。
フリーラジカルとは酸化物質で、上記の化学物質や紫外線などのほかに、心身にストレスを受けると体内に発生します。
これは細胞の正常な働きを妨げるもので、活性酸素もフリーラジカルの一種です。
酸化でダメージを受けた細胞は細菌やウイルスと闘う力を失い、老化を促進するだけではなく、心臓病、脳卒中、癌などの生活習慣病を誘発することになります。
ビタミンCにはこの有害な活性酸素を無毒化する働きがあります。
1.ビタミンCは、ウイルスを撃退する白血球の働きを活性化させウイルスを攻撃し体の免疫機能を強化すると言われています。
血液の中の免疫に大きくかかわっている白血球も体内に細菌や、ウイルス、かびや体内で癌化した細胞と戦うために大量のビタミンCを必要とします。
ビタミンCには、胃癌や肝癌の原因となるニトロソアミンという発癌物質が体内で生成されるのを抑制するとともに、発生したニトロソアミンに働きかけそれを無毒化する作用があります。
さらに、抗癌活性を持つ免疫物質インターフェロンの生成も促進することで、癌の予防をも促すことが出来るのです。
細菌や、ウイルス、かびや体内で癌化した細胞、化学物質、有害金属などによってミトコンドリヤがダメージを受けてしまうと、ミトコンドリヤはジヒドアスコルビン酸に電子を与えることが出来なくなり、ビタミンCはまたたく間に消失してしまいます。
このため、大量のビタミンCの補給が必要になるのです。
また、ビタミンCによって合成を促されるコラーゲンが豊富にあればのどや鼻の粘膜が強まり、風邪のウイルスの侵入を防ぐことが出来ると考えられています。
2.現代は大人も子供もストレス社会に生きているため、一般的に言われているビタミンCの量以上にビタミンCを大量に摂る必要があると言われています。
私たちは体にストレスを感じると、副腎から抗ストレスホルモンであるアドレナリンを分泌してストレスに対応しようとします。
この抗ストレスホルモンの生成にビタミンCが利用されるため、ストレスが強ければ強いほどビタミンCは大量に消費されることになるのです。
3.ビタミンCは、肌の弾力やうるおいを保つコラーゲン、関節のクッションとなる軟骨などを作り出す働きもあり、ビタミンCが不足すると肌荒れ関節痛が生じます。
体を作るたんぱく質の約30%を占めるコラーゲンは、細胞間のセメント的な役割を持ちますが、丈夫な筋肉、血管組織、骨、軟骨の形成に欠かせない成分です。
骨粗鬆症の予防にカルシウムだけではなく、ビタミンCが必要だと言われるのは、コラーゲンが骨の成分である点以外に骨へのカルシウムの沈着を促して骨を強くするからです。
このコラーゲン合成にビタミンCは必要です。
ビタミンCが不足していると食べ物でいくらコラーゲンを補給しても体内では合成することはできません。
血中ビタミンCと疾病リスクとの関係
◆血中ビタミンC濃度と疾患リスクとの関係をEyripian Prospective Investigation into Cancer and Nutrition Studyの一貫して約2万人の英国男女(45~79歳)を対象にして4年間追跡調査した報告によると、男性では血中ビタミンC濃度が高くなるほど全死亡、心血管障害、虚血性心疾患および癌発生リスクの低下が見られたとされています。
また、1976年から実施された米国国民健康栄養調査Ⅱの一貫として行われた調査でも、血中のビタミンC濃度が低い男性では死亡リスクが高まる可能性があり、癌による死亡率を高めることに寄与することを示唆しています。
1.ビタミンCと癌
ビタミンCは、様々ながん発生率の低下に強く関連することが知られています。
特に口腔癌、食道癌、および胃癌については、1997年に米国癌研究財団と世界癌研究基金が、”Food, Nutrition and Prevention of Cancer’s Global Perspective”を出版し、その発生率を減らすことが期待されると評価されています。
◆ニュージャージー州NurleyにあるHoffman-LaRoche社の研究者らは既に公表された文献をレビューし、疫学研究と介入試験のどちらでも、1日1,000㎎のビタミンCを摂取することによって、成人における胃の前癌病変及び胃癌のリスクが低下することを「強く示唆している」ことを報告しています。
血中ビタミンCと発癌性物質ニトロソアミン
日本人は欧米人の5倍から10倍のニトロソアミンをとっているとも言われています。
亜硝酸は、食品添加物として保存や発色のために利用されていて漬物や自然の食物にも含まれ、2級アミンも食品中に含まれています。
発癌性物質のニトロソアミンは、2級アミンと亜硝酸が反応して生成されますが、胃内のような酸性条件下で特に発生することが知られています。
ビタミンCは2級アミンよりも早く亜硝酸と反応するために、継続してビタミンCを補給すると、組織生検で消化管組織や粘膜、胃液中のビタミンC濃度が高まるためニトロソアミンの生成が抑えられます。
2.ビタミンCとヘリコバクター・ピロリ菌
◆アメリカ2地域及び英国において実施された追跡調査の中でのコホート内症例対照研究において、胃癌患者は対照群と比べて、有意にピロリ菌への感染歴の頻度が高いことが明らかになっています。
その中で食生活などの因子もピロリ菌への感染の影響、あるいは感染の病理学的効果という点で検討が進められてきた結果、ビタミンCの摂取が、ヘリコバクター・ピロリ菌の胃粘膜への影響を中和する可能性があること、慢性萎縮性胃炎の進行を抑制することが報告されています。
また、胃炎と胃癌以外でもヘリコバクター・ピロリ菌が原因で、アトピー性皮膚炎、HDLコレステロールの上昇など様々な疾病に関連があると言われています。
ヘリコバクター・ピロリ菌は、血液中にビタミンCが低ければ低いほど感染率が高いので、ビタミンCを常に補給することは大変有益です。